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ディズニー音楽の和訳・考察を中心にしていく予定.

オペラ座の怪人より"AII I ask of you"について考える

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オペラ座の怪人より、ALL I ask of youを和訳です。曲の解釈については最後にまとめていますので、興味のある方は読んで頂けると幸いです。

 

No more talk of darkness,
もう暗闇の話はいいんだ
Forget these wide-eyed fears
過度な恐れを忘れて
wide-eyed feads:直訳だと「目を見開いた恐れ」ですが、目を見開くほどの恐れは過度な恐れだと解釈できます
I'm here, nothing can harm you,
僕はここにいて、何も君を傷つけることが出来ない
My words will warm and calm you.
僕の言葉は君を温かく包み穏やかにする

Let me be your freedom,
僕を君の自由にしてほしい
Let daylight dry your tears;
日光に涙を渇かせて
I'm here, with you, beside you,
僕はここにいる、君と共に、君の側に
To guard you and to guide you.
君を守り、そして導くために

Say you love me every waking moment,
目が覚めている全ての瞬間において私のことを愛していると言って
Turn my head with talk of summertime.
(あの)夏の話で私の注目を集めて
Say you need me with you now and always;
今、そしていつもあなたは私が必要だと言って
Promise me that all you say is true,
約束して、あなたの言う事が全て真実なんだと
That's all I ask of you.
それが私があなたに望む全て

Let me be your shelter,
僕をあなたのシェルターにして
Let me be your light;
あなたの光にして
You're safe, no one can find you,
君は安全で誰も君を見つける事が出来ない
Your fears are far behind you.
あなたの恐怖は遠くの過去にある

All I want is freedom,
僕が求める全ては自由
A world with no more night;
もう夜のない世界
And you, always beside me,
そしてあなたはいつも僕のそばに
To hold me and to hide me.
僕を抱きしめ私を隠すために

Then say you'll share with me one love, one lifetime;
そしてあなたは僕と一つの愛、一つの人生を共有すると言って
Let me lead you from your solitude.
僕にあなたを孤独から導かせてほしい
Say you need me with you, here beside you,
ここに貴方が僕と一緒にいることと、僕が必要であると言って
Anywhere you go, let me go too,
君がどこに行こうとも、僕も一緒に行かせてほしい
Christine, that's all I ask of you
クリスティン、それが僕が君に望む全てだ

Say you'll share with me one love, one lifetime;
あなたは僕と一つの愛、一つの人生を共有すると言って
Say the word and I will follow you.
世界と僕が君についていくと言って
Share each day with me,
毎日を僕と共有して
Each night, each morning.
全ての夜と朝
Say you love me! You know I do.
愛していると言って!僕はそうするよ
Love me, that's all I ask of you.
僕(私)を愛して、それだ貴方にのぞむ全て

(they kiss)

Anywhre you go, let me go too
貴方がどこに行こうとも、僕も連れて行って
Love me, that's all ask of you
愛して、それが私が貴方に望む全て

 


以下はAll I ask of youのリプライズ(reprise )
※repriseは英語だとリプリーズと発音するらしい

[セリフ部分(lines)]
I must go
私は行かないと!
They'll wonder where I am
みんな私がどこにいるか疑問に思っている
Wait for me Raoul!
ラウル、待ってて!
Christine I love you!
クリスティーン、貴方を愛している

[以下歌の部分] 
Order your fine horses!
貴方の素敵な馬を呼んで!
Be with them at the door!
そして馬を扉の近くにつけておいて
And soon you'll be beside me!
そして次期に君は僕の側に
You'll guard me and you'll guide me
貴方は私を守って導くの

[Phantom]

I gave you my music
俺は俺の音楽をお前に与えた
Made your song take wing
お前の音楽に翼を与えたんだ
And now how you've repaid me
そして今、あなたはどのように私に報いたのか
Denied me and betrayed me
俺を否定し裏切った
He was bound to love you when he heard you sing
彼はお前のことを愛する運命にあったんだ、お前の音楽を聞いたときに
Christine
クリスティー
(英語発音だとクリスティンですが、フランス語の場合クリスティーヌなので、クリスティーヌと訳します) Christine
クリスティー

Say you'll share with me one love, one lifetime
あなたは僕と一つの愛、一つの人生を共有すると言って
say the word and I will follow you
その言葉を言ってそして私は貴方についていきます
Share each day with me, each night, each morning
毎日を僕と共に共有して、毎夜、毎朝

[Phantom]
You will curse the day you did not do All that the Phantom asked of you!
お前はファントムが望む全てのことをしなかったその日のことを呪うだろう
Go!
(シャンデリアよ)行け!

 

解釈

Prima Donnaの後に流れるAll I ask of youは、クリスティーヌとラウルが互いに愛し合っていることを象徴する曲だと考えます。おそらくこの曲を聞いた怪人は、無理矢理にでもクリスティーヌを手に入れることを決意し、「ドンファントムの勝利」の作成に入るんでしょう。

 

ファントムにそのような重大な決意をさせたという意味で、この曲はミュージカル「オペラ座の怪人」においてとても重要な曲の一つになります。色々なアプローチから解釈ができると思うのですが今回は以下3つの視点からこの曲を噛み砕いて行こうと思います。

 

  1. クリスティーヌの曲としてのAll I ask of you
  2. クリスティーヌとラウルの関係性
  3. ファントムにとってのAll I ask of you

 

1. クリスティーヌの曲としてのAll I ask of you

この曲がまず誰の曲なのかと考えてみると、初見だとAll I ask of youはラウルに当てはめる人が多いのではないでしょうか。確かに歌い始めはラウルだし、ハンサム貴族が恋に落ちた女性に対して歌う、この甘々な歌詞は「ラウルの曲」と言う印象を強く受けます。

 

しかしなぜ私がこの曲をクリスティーヌの曲だと思うかというと、その理由は以下の通りです。まず、ラウルが登場する曲は

  • Think of me
  • Little Lotte
  • All I ask of you
  • Masquerade

以上4つですが、まともに歌っているのはThink of meとAll I ask of youの2つです。さらにAll I ask of youも半分くらいしかラウルは歌っておらず、こうやって俯瞰して見てみるとラウルは自分メインの曲というものを一つも持っていない。(気がする)ラウルは作中においてかなり存在感を放ちますが、実はオペラ座の怪人という作品において、ラウルは実はそれほど重要な人物では無いと考えた方が良いのかも知れません。

 

そして、個人的に重要だと思うことがAll I ask of youというフレーズを最初に口にしたのはクリスティーということ。ラウルは歌い始めにおいて、クリスティーヌに対して自分を側においてほしい、君を守らせてほしい、そう語りかけます。それに対するクリスティーヌの答えが、自分を愛している、必要だと言って。そしてその言葉が真実なんだと約束して。それがAll I ask of youだと。

 

これが仮にラウルの曲なら最初のサビの部分はラウルが歌う方が自然な気がするし、"Let me be with you"(適当)みたいな、ラウルがよく口にする"Let me be ~"というフレーズがタイトルになるのではないだろうか。まあlet to me be ~の~に当たる部分はfreedom, shelter, light, ...とコロコロ変わっているので曲のタイトルとしてはやはり不自然なのだが。そしてこれらのフレーズはやはりサビではなくaメロ部分に現れている。

 

以上がAll I ask of youがクリスティーヌの曲として考えられる主な根拠です。

 

2. クリスティーヌとラウルの関係性

次にこの曲から見えるラウルとクリスティーヌの関係性について見て行こうと思います。

 

Aメロ:ラウル
A'メロ:ラウル
サビ:クリスティー

A'メロ:ラウル
A'メロ:クリスティー
サビ:ラウル

サビ:クリスティーヌ、(途中からラウル)
サビ':クリスティーヌ、ラウル
サビ:ハモリ(クリスティーヌ&ラウル)

 

曲の構成としてはこんな感じだろうか。バランスよく一緒に歌っている感じがするし、最後にハモリパートがあることから息の合った恋人達の曲というふうに見える。

 

ただ歌詞を見ていて感じる一つの疑問として、「クリスティーヌ重たくね?」ということがある。ラウルが強引な歌詞を歌うのは理解できる。なぜならLittle LotやMasqueradeからもラウルがクリスティーヌの話をあんまり聞かない、少し強引な性格であることは読み取れるから。

 

でもクリスティーヌってあんまり強引な女性というイメージはAll I ask of youが流れるまでは受けませんよね。The Phantom of The operaとかthe music of the nightでファントムにまるで人形のように歌わされたり、行動させられるシーンが印象的なせいかも知れませんが、この曲からは恋人にかなり重たい愛を求める、メンヘラチックな女性のイメージを受けます。

 

クリスティーヌがこうなっている理由として考えられるのは、ファントムに対する信頼が揺らいで不安になっている状況だからです。だからこそ「自分を愛せ、真実だけを口にしろ、say, say, say,...」と口にするんでしょうね。

 

それを踏まえて考えると、クリスティーヌって本当にラウルを選んで良かったのだろうか?と私は思うわけです。特に一番最初にクリスティーヌのサビの部分を取り上げて見てみます。

目が覚めている全ての瞬間において私のことを愛していると言って
(あの)夏の話で私の注目を集めて
今そしていつも、あなたは私が必要だと言って
約束して、あなたの言う事が全て真実なんだと
それが私があなたに望む全て

 

これをみる限り、クリスティーヌはファントムのことを考えたくないと思っており、そして求愛してくる人(今回はラウル)に裏切られることを極端に怖がっています。つまい、ファントムのことを忘れたくて仕方がない辛い心境において、たまたまラウルが強く求愛してきたので、この2人はくっつくことになった、そういう邪推もできるのではないかと思うのです。

 

Think of meやLittle Lotで歌われるように、確かに2人は昔からの知り合いなので運命的な出会いであったことは間違い無いでしょう。しかし昔好きだった人同士が出会っただけでここまで熱狂的になれるもんでしょうか?ラウルはガチ恋なんでしょうが、クリスティーヌは果たしてそうだったのかに疑問が残る、そんなことを考えてしまいます。まあ、自分の不安感がラウルを魅力的に魅せているのだとは、当の本人であるクリスティーヌは微塵も思っていないのでしょうが。

 

これは余談ですが、Say, Say, Sayと繰り返しラウルに言葉を求めるクリスティーヌは、ファントムがクリスティーヌし対してSing, Sing, Singと言っているようで、師匠似だなと思い、なんかいいですよね。

 

3. フォントムにとってのAll I ask of you

ファントムはrepriseの際にAll I ask of youを歌いますが、それまではずっと2人の歌を聴いていたのだと考えられます。歌詞から、クリスティーヌはファントムを避けようとしているし、自由になりたいと言っている。しかも、ファントムのことをnightと比喩したり、hide meとラウルに対して求めている。

 

ラウルはファントムをdarknessと比喩し、君を守り導かせてほしいとクリスティーヌに求め、repriseにおいてはクリスティーヌの方から「You'll guard me and you'll guide me」と言う始末。

 

ラウルからのdarkness呼ばわりやクリスティーヌへの求愛は単純にむかつくくらいでしょうが、クリスティーヌの言葉は、今までずっと人種の違うクリスティーヌを守り、そして導いてきたファントムにとって、深く心に刺さることでしょう。実際にファントムの悲しみ・苦しみを表現するように、最初のファントムパートは力弱く、悲壮感漂う風に歌われます。ファントムの啜り泣くシーンはこちらも胸が痛い。

 

しかしその後の2人のユニゾンを聞いたファントムは悲しみが怒りへと変わり、シャンデリアを落とし、クリスティーヌへの復讐を誓うことになります。その怒りや決意が、"You will curse the day you did not do All that the Phantom asked of you!"この部分の歌い方によく現れていて最高です。

 

ところで、ファントムのパートは"He was bound to love you when he heard you sing"以外は全てクリスティーヌに対して歌われており、ラウルなんて殆ど眼中にありません。クリスティーヌへの思いの強さが現れていると感じる一方で、私は少し不自然にも感じました。歌パートが短いせいかもですが、ラウルが主要人物なのであれば多少は触れてあげるべきです。ラウルは存在感こそ強いですが、フォントムにとってはそれほど重要な相手ではないと言う気がします。

 

そしてこの"He was bound to love you when he heard you sing"と言うセリフについても一考の余地があります。とてもシンプルに考えれば、クリスティーヌの歌声は素晴らしい為、その声を聞いてしまえばラウルが恋に落ちるのは自明であったのだ、と言うことになります。ですが、それにしてはbound to loveというのは少々ロマンチックな言葉選びな気がします。自分以外の男とクリスティーヌとの間を表現するときにわざわざこんな言い回しをしなくても良いのではと思います。

 

ではどういう意味か。。。もし彼女の声を聞けば恋に落ちるというのが一般的な事象なのであれば、クリスティーヌに惚れた男の人はラウル以外にもいるはずなのでやはり何かの意図があると考えられます。ラウルが聞くことに意味があるのです。そもそもここでクリスティーヌが歌った曲は、どの曲になるのかと言うとThink of meでしょう。なので結論、この時点では分からないので、think of meの解釈時にまたこの部分を考えてみようと思います。

 

(p.s.参考のために、劇団四季のセリフを確認してみたのですが、この部分は和訳されていませんでした。)

 

また「真実を言うと約束して。」という言葉から、クリスティーヌはファムトムがangle of musicではなかったのだとこの時点で感じていることが読み取れますが、2部のwandering childではクリスティーヌにしたて再び自分のことをangle of musicだと主張しますよね。angle of musicとは何なのか問題については、All I ask of youでだけで議論できるテーマではありませんが、フォントムにとってのangle of musicの意味についても多少触れてみようと思います。

 

どの部分から解釈するかと言うと、"Made your song take wing"です。一見ただの隠喩に思えますが、phantomがwingと言うとちょっと意味が違って聞こえてくる。そう、このwingはAngel's wingのことなんでしょう。ファントムは自分自身をangle of musicだと自称するわけで、最愛の弟子であるクリスティーヌにその羽を分け与えたという感じなのでしょう。

 

ですが、"You will curse the day you did not do All that the Phantom asked of you!"とその直後に歌うわけです。「お前はangle of musicなのphantomなの、どっちなのよ?!」そう思いますよね。angle of musicについては、この曲だけでは解釈しきれないので今回はこれ以上は触れませんが、色々考えることが出来るフレーズでした。

最後に

ここまで読んで下さりありがとうございました。All I ask of youを流しながらこの記事を書いていたのですが、そんな深く考えなくても甘々な曲で耳に優しいですね。愛が重たくてちょっと引くレベルではありますが、多分2人ともまだとても若いのでそんなもんなんでしょう。多分年下、、、そんな恋愛できて羨ましすぎる。

 

とう言うか、今回はこの歌詞がファントムがいる事を前提で書いたので甘々な曲の中にも少し影があるふうに感じていたのですが、darknessとかfearsとかを普通の人生における困難な事だと思えば、めっちゃ普通のラブソングになりませんかこれ。もし、ラウルもクリスティーヌもファントムのことを歌ってたんじゃなくて、ただ「色々困難がある人生を2人で乗り越えよう!と歌っていたのであれば、ファントムのただの一人相撲でやばい

 

あれ、、、どっち??笑 いやまあ流石にそれは無いとは思うけど、解釈は色々あってもいいですからね。

That's all I ask of musical